その9 君が全て
雅納気様の後ろ姿と鞘の顔を交互に見る。
いつもは振り返ってオレの名を呼んでくれる雅納気様も、今は黙って歩いて行ってしまう。
鞘はずっと下を見ていてオレと目を合わせてくれない。
オレは遠ざかる雅納気様を走って追いかけた。
「紅納刃。僕のところに来てくれたんだね。」
雅納気様は笑ってオレの頬を撫でた。
「雅納気様は女神様に会いに行くの?」
オレがそう言うと雅納気差は真顔になった。
「紅納刃がいるからいかないよ。」
雅納気様は笑ってた。
でも。
「会いに行った方が良いよ。」
「・・・わかった。紅納刃が言うなら会いに行くよ。」
そう言った雅納気様の手を思わず握ってしまった。
行かないでという様に。
「大丈夫だよ紅納刃。」
オレはとっさに手を握ったいい訳をした。
「雅納気様もう一つお願いがあるんだ。」
言いたいのはそんな事じゃなかったけど。
「龍を目覚めさせてあげて。」
「・・・良いよ。」
約束だからねと言って雅納気様は少し悲しい顔をした。
「じゃあ紅納刃。良い子で待ってるんだよ。」
「うん」
今日は雅納気様の後ろ姿を何度も見る。
「いってらっしゃい」
手を振ると、雅納気様が振り返って笑ってくれた。
女神様はずっと雅納気様が好き。
雅納気様が会いに行くのが一番だ。
雅納気様は力を使うと女神様に報告に行く。
そこに何の意味があるのかは知らない。
知っているのはそういうシステムになっているってことだけだ。
「紅納刃」
気がつくとヒュウがいた。
雅納気様がいなくなってからどれだけの時間が流れたのだろう。
オレにはわからない。
「ヒュウ。龍と仲良し?」
「どうだろうか。でも、目覚めたと聞いた。紅納刃か?」
「・・・オレが望んで雅納気様が叶えた。」
「お前の主は女神のところか。・・・人だと知っていたか。」
「うん。オレでもわかる。どんなに血が良くても、人と龍は間違えない。」
「そうか」
龍が言った眠ったモノは龍でなく人。
どうして龍と言ったのだろう。
「龍王はもう悲しい顔をしてない?」
「大丈夫だ」
そういうとヒュウは行ってしまった。
きっとヒュウの望みも叶ったのだろう。
「雅納気様」
ずっと一緒にいて欲しかったと今更言っても、雅納気様は笑ってくれるだろうか。
その9 終
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