その10 それが僕の幸福
昔から何一つ変わらない。
この地も、己も。
未だに僕は紅納刃がいないと心が消える。
「我が名は雅納気。」
その一言で全てが伝わる。
「女神。我が今鞘と人間を目覚めさせたのは我が刀のため」
報告だけすればいい。
そう思うのに。
「待って」
静かな声が響く。
姿は僕が紅納刃と過すようになってから紅納刃そっくりに変わった。
声さえも。
全てが気に障る。
「貴方は失う怖さを知っているけれど、あの子は知らないわ。」
「あの子?我が紅納刃に会ったのか?」
「ええ」
「そうか」
「だから・・・」
「一年離れる。それで良い。」
その先を言わせまいと咄嗟に行った言葉に自分で嫌になる。
「では」
報告だけでなく会って話をしたのは紅納刃が望んだからだ。
それだけで僕は変わる。
「紅納刃。」
視界に姿が入るだけで心が戻る。
「雅納気様」
聞きたいのはこの声。
見たいのはこの姿。
「女神様に愛の告白された?」
「そんなはずないよ。ほら紅納刃。おいで」
腕の中に閉じ込めて逃げないように。
「女神に会ったんだってね。」
わかりやすいほど紅納刃の体が跳ねる。
「ちょっと会っただけだよ・・・」
消え入りそうな声。
「どうして黙ってたの?」
「怒ると思って・・・」
怯えた声。
でも、甘えた声。
「確かに、怒ったかもね」
「雅納気様オレずっと一緒にいて欲しかった」
「だれとだれが?」
「オレと・・・雅納気様が」
思わず笑ってしまう。
なんてかわいい。
「僕もずっと一緒が良いよ。」
でも僕は自分でそれを壊さなくてはいけない。
その10 終
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