その11 君にわからなくても
「八百年共に寝よう。そして紅納刃は一年僕より早く起きて狐と共に過ごすと良い。」
その言葉にオレは立ち尽くした。
「雅納気様と一年離れるの?」
「そうだよ。一年たったその時に僕の名を呼ぶんだ。そしたら目覚めてあげる。」
「嫌だ。オレも一年眠る。」
雅納気様の手を強く握った。
「一年たたなくても、嫌になったら僕の名前を呼べば起きてあげる。僕を起こすとき以外では僕の名を呼んではいけないよ。」
「じゃあ、オレすぐ呼ぶ。起きたら一番に呼ぶ。」
「紅納刃・・・」
雅納気様は困った顔をした。
「一年だよ。僕との約束は一年。」
雅納気様は困った顔をしているけど、悲しげでも寂しげでも無い。
悲しくて寂しいのはオレだけだ。
「一年・・・」
「できるよね?」
オレは雅納気様の顔を見た。
変わらず困った顔をしている。
オレは雅納気様に笑って欲しくて頷いた。
「良い子だ。流石は僕の紅納刃。」
雅納気様は笑ってくれたけど、先の事を思うとオレは笑えなかった。
「狐を呼ぼう。」
雅納気様はオレから目を逸らした。
「狐ってヒュウのこと?」
オレがいうとヒュウは笑った。
「一年我が共に居よう」
「狐。一年僕はお前に紅納刃を貸すんだ。貸すだけだ。」
「わかっている。」
ヒュウは笑っていた。
「ヒュウは望みがたくさんあるんだね。」
「仕方ないさ。我は長だからな。・・・でもこれで一番の望みが叶う。」
オレは悲しいのにヒュウはずっと嬉しそうだった。
雅納気様がどんな顔をしているか、オレは怖くて見る事が出来なかった。
紅納刃が僕を見ない。
わかっていない。
僕には紅納刃の一年がどのように過ぎるかが手に取るようにわかる。
僕の刀は僕がどんな思いでこれを告げたのかわかっていない。
間違いなく僕の方が強く望んでいる。
共に在りたいと。
「紅納刃。僕は約束を守るよ。」
永遠、ずっと。
その11 終
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