その7 君を呼ぶ
「紅納刃・・・僕は紅納刃が望むことすべてを叶える。あの記憶を望むのなら全て、あげるよ」
雅納気様の声が聞こえる。
聞こえるけれど、眠くてよくわからない。
「紅納刃。僕の刀。」
そっと額に手の平の感触がした。
そして。
流れ込む記憶。
今からずっとずっと昔。
その日はとても風の強い日だった。
「すごい風だね・・・」
主はそう言いながらどこか楽しそうだった。
「雨も降ってきた」
風に乗って雨が激しく吹き付けてくる。
洞窟を見つけて入り、そこに座って止むのを待った。
「・・・楽しいね。紅納刃がいればどんな事も楽しい。」
そう言って主は雨にぬれたオレを拭いた。
「そうか。紅納刃は・・・」
その先は言わなかったけれど、主は壊れると理解したんだろう。
「僕の大切な紅納刃。永遠の僕の為に紅納刃も永遠でいてくれなくては」
さっきより優しくオレを拭いた後、主は風と雨を止めた。
「僕の紅納刃。君の為に鞘をつくってあげよう。」
それが のはじまりだった。
「さ、や・・・。オレのさや。名前なんてついてなかったから思い出せる訳なかったんだ。」
驚いて目を開けると雅納気様がいた。
「嫌な事は思い出さなくて良いよ。忘れているのも大切な事だからね」
忘れているのも大切。
雅納気様がそう言うのなら・・・。
「本当にそう思うか?俺の刀。」
声がしたかと思うと黒いモノが立っていた。
「生きていたんだね。僕がつくったからそう簡単には失わないか。」
雅納気様は冷静に黒いモノに答える。
この黒いモノはさっき思い出した、
「オレのさや・・・?」
オレがそう言うと鞘は嬉しそうにした。
「そうだ。お前の鞘だ。」
「僕の刀だよ。紅納刃は僕の刀だ。」
「お前は持ち主なだけだろ?」
「なら君は鞘なだけだよね?」
鞘と雅納気様が睨みあう。
「さや。どうしてそんなに黒くなったんだ?」
「・・・紅納刃」
鞘はオレの名を呼び黙った。
「雷黒・・・。俺の名だ。」
その一言で全てわかった。
思い出してしまった。
「雷黒・・・。」
その7 終
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