図書館〜永遠の約束〜
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その5 ずっと

時が過ぎれば全て朽ちる。

俺と同じように。

それをお前は認めないだろう。

ゆっくりと時が大切なモノを奪う。

俺は朽ちようとしている。

それならば

「共に最後を」

きっとそれを望んでいる。

俺ではない存在に。


「紅納刃。木の実食べてみる?食べたことないでしょう?」

雅納気様に差し出された赤い木の実を齧ると、シャリッと良い音がした。

「おいしい?」

そう問われても答えられず

「水の感じがする。」

とだけ返した。
初めてモノを食べたのだ。
おいしいかどうかなんてわからない。

「水の感じ・・・。紅納刃の感性は独特だね。」

そういってオレの頭を撫でた。
もう怒ってないみたい。
いまだにオレはドキドキしていて落ち着けない。

「錆びないかな」

「石でしょう?」

「苔生えたりするかな」

「毎日僕が磨いているんだ。生えるはずがないよ。」

雅納気様はもう一度オレの頭を撫でると、手を握った。

「でも、紅納刃が錆びようと、苔が生えようと紅納刃は僕の自慢の刀だよ。」

「雅納気様・・・」

「紅納刃。甘い香りがするね。」

雅納気様の言葉に驚いて目を見開いた時、ふわりと雅納気様の背後に影が降りてきた。

そのとたんに雅納気様の表情が厳しくなる。

「死の支配者。お前の刀は人になったんだってな。狐から聞いたぜ」

影は雅納気様を見て笑った。

「・・・龍が地に降りるとはね。」

雅納気様の言葉に影は不機嫌な表情をしながら姿を現した。

それにしても、雅納気様。
気配と声で誰かわかるなんて流石だ。

「俺にも都合があるんだよ。それで、人になった刀ってのはお前か?」

そう言ってオレを指差した。

「まぁ、聞くまでもないか。今まで死の支配者が誰かと居た所なんて見たことないしな。」

影がオレに近づこうと一歩前に出たとき、もう一つ影が現れた。

「今日は邪魔者が多いね。」

雅納気様はそう言うと、影からオレを隠すように立った。

二つ目の影が姿を現すと、揺らいだ空気の中からこの前会った狐が出てきた。
影は見たことがない。

でも雅納気様はその影を警戒しているみたいだ。

「邪魔して悪いが、大切な用があるんだ。」

最初の影が言う。

二番目の影は雅納気様が警戒するだけはある。
気配に全く隙がない。

緊迫した空気の中、狐が笑ってオレを見た。

「この間の木の実か?」

さっき雅納気様から貰った実を見て面白そうにしている。

「そうだよ」

狐の笑顔に安心して笑い返そうとしたら、雅納気様が壁になって遮った。

「・・・狐。それに龍。僕の紅納刃に何の用だ。」

目に見えるほどの殺気を出して雅納気様が言う。
さっきまで機嫌良かったのに。

「単刀直入に言う。お前とお前の刀の力を借りたい。」

「雅納気様とオレの・・・?」

思わず口にすると黙っているようにと雅納気様に目線で制された。

「そうだ。人になった刀であれば最後の龍・・・暗黒龍を長き眠りから目覚めさせることが出来る。」

「僕の紅納刃は僕のモノ。僕の為だけに存在する。龍が眠っていようがいまいがそれを変えることなんてさせない。」

「その刀がお前の望むようにしか動けない事は知っている。だからお前の力を借りたいんだ。」

「僕に龍の目覚めを望めと?」

「そうだ。」

「・・・笑わせる。紅納刃の目の前で僕のことを死の支配者と呼び怖がらせそれによって今紅納刃は僕を恐れている。そんなことをした者の為に望めと?」

「雅納気様・・・オレは!」

思わず雅納気様の腕にしがみつくと、雅納気様はじっとオレの顔を見つめた。

「僕のことを恐れていないと言える?」

「言えるよ主。オレは主を恐れてなんていない。」

「紅納刃・・・。僕の唯一。僕の名前を呼んでごらん。」

「雅納気様・・・。」

「良い子だ」

主は・・・雅納気様は険しかった目元を緩めた。

「望めよ、紅納刃。龍の目覚めを。」

そう言い残すと影は消えた。
結局、二番目の影は一言も喋らなかった。
残ったのはオレと雅納気様と狐だ。

「龍は帰ったか。会うのは二度目だな。紅納刃。我の名前はヒュウだ。」

そう言うと、狐ヒュウは尻尾を揺らしてにっこり笑った。
思わずオレも笑い返す。

雅納気様は笑わずオレを見ていた。

「雅納気様・・・?」

「紅納刃は何を望む?」

「えっ・・・?」

オレと雅納気様の距離を太陽がずっとうつしていた。


その5 終


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